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STORY OF A HOME / N FAMILY

分けて、離して、1か所だけ、つなぐ。

設計担当 青山 享平

設計担当 / Kyohei Aoyama

青山 享平

「要望をそのまま形にするだけでなく、暮らしとコストのバランスまで一緒に考える」

ご主人のご両親が長く暮らしてきた家を建て替えて、二世帯で住む。最初は、同じ土地に1棟ずつ建てる案もありました。図面と見積もりを作って比べ、二世帯1棟に決め、玄関も水回りも電気も水道もすべて分け、2階は離し、それでも1階に1か所だけ、行き来できる場所を残した家ができるまでを、設計担当・青山への聞き取りからご紹介します。

PROLOGUE

思い出のある家を、建て替える。

N様は、30代のご夫婦と息子さんの子世帯、60代のご両親の親世帯の、二世帯5人です。息子さんは、建てた当時4歳でした。家を建てる前、子世帯は近くのアパートに、親世帯は今の建築地に建っていた家で暮らしていました。お父様は自営業で、建て替える前の家にも仕事場を設けて、そこで仕事をしていました。

暮らしに、ものすごく大きな不満があったわけではありません。ただ、もとの家は特に水回りが寒い。冬は、お風呂に入るときも、トイレに行くときも、寒い思いをしていました。ご両親はもちろんそう話していましたし、もともとそのご実家に住んでいたご主人も、そこは感じていたと青山は聞いています。子世帯のアパートも、水回りは寒いところでした。どちらの世帯からも、性能の高い家がいい、という要望がありました。

建て替えを言い出したのは、ご主人です。ご両親が住むご主人の実家を、これからも維持していきたい。この場所で建て替えて、二世帯で暮らしたい。いちばん強くそう思っていたのが、ご主人でした。息子さんの年齢のこともありました。できれば、小学校に上がる前に。転校はさせたくない。ご主人は、そう話していました。奥様は、ご主人がやりたいなら、という受け止め方でした。もともとご両親とも仲が良く、そこまでの反対はありませんでした。

少し反対していたのは、お母様です。長く住んだ家で、思い出がたくさんある。その家を壊すこと自体に、かなり躊躇していました。家も年数が経っていて、将来のことも考えたい。ご家族は長い時間をかけて、みんなで集まって、話し合いを何回も重ねました。青山もお母様に、こう話しました。お孫さんが近くで一緒にいてくれるし、今よりも夏涼しく冬暖かい家に住めますよ、と。みんなで集まった場で、最終的に出たのが、ご主人のこの言葉です。「みんなで一緒に、いい家で快適に過ごそうよ」。お母様は、みんなに説得された形で、建て替えに納得されました。ただ、打ち合わせを進めていくうちに、だんだん気持ちも前向きになっていった。青山はそう記憶しています。

  • ご両親と将来も仲良く過ごせる住まいにすること(ご主人が、最低限、絶対守りたいと話していたこと)
  • ご主人の実家を、この場所で維持していく
  • 息子さんが小学校に上がる前に
  • 水回りまで寒くない、性能の高い家
  • お父様が仕事を続けられる、仕事場

相談先は、最初からニッケンホームでした。N様は青山の親戚です。ご主人と青山は、同じ祖父をもついとこどうし。その祖父の家も、青山が担当して建てていました。冬暖かく、夏涼しい。それを実際に体感していただいていたので、家の性能については、ご家族はもう信頼してくださっていました。最初は、ご主人から青山に連絡がありました。実は、家を考えている。ただ、ご両親との兼ね合いもあるので、なかなか大変かもしれないけれど、ちょっと手伝ってほしい。そんなご相談でした。ほかの住宅会社は見ずに、直接ご相談をいただいています。

最初は、ご主人がお一人で一度ニッケンホームに来られて、状況やご要望を先に伺いました。そのあと、青山がご両親の家に伺って、全員で集まってお話をしました。それぞれに意見があって、やりたいことがある。うまいこと、まとめてくれ。そんなふうに言われた記憶が、青山にはあります。青山が最初に聞いたのは、建て替えるとしたら、どういう形にするか、でした。ご主人は、今の場所で建て替えたい。ご両親は、建て替えるなら、まず別々に建てられないか。奥様は、二世帯でも別々でもいいけれど、二世帯ならプライバシーはちょっと分けたい。このときはまだ、二世帯住宅に決まっていたわけではありませんでした。

01 ONE HOUSE OR TWO

1棟ずつか、二世帯1棟か。

1棟ずつ建てる案は、最初はご両親から出ていました。ご両親も、プライバシー、つまり奥様との関係にかなり配慮していて、別々のほうがいいんじゃないか、という思いが最初にあったのです。敷地そのものに広さがあったので、別々でも建てられるかな。青山もそう考えて、最初はその案をご提案しました。

建て替えることが決まり、じゃあ計画をどうするか、という打ち合わせの中で、青山は2つのプランをご提案しました。プランの打ち合わせは、建て替える前のご両親の家で、ご家族がそろって行うことが多くありました。1棟ずつのプランも、図面と見積もりを作って、二世帯1棟の案と比べました。ただ、建物を2つに分けると、コストがかなり上がってしまいます。ご両親は、もちろん迷われていました。お父様もご主人も、コストのことを口にしました。1棟ずつ建てるのは結構コストがかかるね、というのがご家族の反応で、ちょっと難しいな、という判断になりました。融資など、資金の面の問題もありました。両方の見積もりを出して比べたそのタイミングで、ご両親も子世帯も、二世帯のほうにしよう、と決めました。

二世帯で建てるとなると、最初に決めておかないといけないことがあります。電気や水道を、世帯ごとに分けるか、分けないか。青山はまずそこをご提案して、ご家族に選んでいただきました。最終的には、電気も水道も、すべて別々に用意しています。太陽光発電も、どちらかの世帯の電気につながないといけません。使用量が多いだろうということで、子世帯のほうにつなぎました。

仮住まいのことも、先に話し合いました。子世帯はもともとアパートなので問題ありません。ただ、ご両親は引っ越しも含めて、タイミングをしっかり話し合いながら、急がせずに進めました。解体の前には、思い出のものがたくさんあるということで、工期にもしっかり時間をとって、ゆっくり整理ができるように段取りをしています。

地盤調査も行いました。調査の結果、改良が必要と出たので、青山はご家族に、安全のためも考えて、しっかりやっておきましょう、とお話しし、地盤の改良工事をしっかり行いました。ハザードマップは青山が確認して、ご家族にお伝えしました。もともと住んでいる場所なので、ご家族はそれほど心配していませんでした。長久手市は山が近いエリアで、災害のリスクは少ないところでした。

N様邸の外観の全体
1棟ずつではなく、二世帯で1棟に。外観の全体です。

02 SEPARATE, YET CONNECTED

分けて、1か所だけつなぐ。

一部を共用にするのは結構難しく、後々問題が起きるかもしれない。完全に分けることは、ご両親も、奥様も望んでいました。予算が叶うのであれば、分けたい。そうして、玄関も、キッチンも、お風呂も、それぞれの世帯にひとつずつ設けた、完全独立型の二世帯住宅になりました。

お父様の仕事場は、新しい家でも欲しい。それは、もともとの前提でした。反対する人は、当然いませんでした。家の外に小屋を建てるような案も、あまり出ていません。仕事場は親世帯側の1階、玄関のすぐ横に置きました。来客は多くないものの、たまにはある。自宅側とは分けたほうがいい。ただ、そのためにポーチを2つ作るのはもったいない。そこでポーチと玄関をまとめる場所にして、今の位置になりました。

3つの玄関があるポーチ
3つの玄関をひとつにまとめたポーチ。左の正面が子世帯、右の手前が親世帯の入口、その奥がお父様の仕事場の入口です。

そのうえで、1階に1か所だけ、二世帯が行き来できる場所をつくりました。お父様の仕事場と、子世帯側のファミリークロークのようなところが、つながっています。お父様が、いつまで仕事を続けられるかはわからない。仕事を引退したとき、介護が必要になったときには、そこから直接行き来できたほうが便利だよね。そう考えて、ここをつなげました。介護が必要になったときは、近くで世話をしたい。ご主人にもその気持ちがあったので、ここをつなぐことには、とても良い反応でした。いまは、普段は鍵をかけて閉じています。

03 APART UPSTAIRS

2階は、あえて離す。

2階は、それぞれの世帯の寝室など、メインの居住のスペースになります。音の問題で、住んでからお互いに揉め事にならないように。青山は、2階の建物をあえて離すことをご提案しました。なるべく揉め事は起こしたくない。それはご家族のご要望でもあったので、この案には4人とも納得で、評価はとても高いものでした。2階は、西側が子世帯、東側が親世帯です。そのあいだは1階の屋根になっていて、2階の部屋どうしは離れています。

二世帯の分け方の説明図。1階は西側が子世帯、東側が親世帯で、それぞれに玄関・LDK・水回りがある。親世帯側の仕事場と子世帯側のファミリークロークだけがつながっていて、普段は鍵をかけている。2階は西側の子世帯と東側の親世帯のあいだが1階の屋根になっていて、離れている
説明用のイメージ図です。部屋の配置・広さは実際の間取りとは異なります。

04 ROOM FOR EVERYONE

車3台と、皆で遊べる庭。

もともと、土地は道路より少し高くなっていました。それを低くするのは結構難しい。そこで青山は、駐車場の台数をもとに建物の位置を決めました。子世帯が2台、親世帯が1台止められればいい。いまは車3台と、自転車置き場のスペースをとっています。

そのうえで、庭もしっかり取れる形を、青山からご提案しました。お子さんたちも、親族も含めると人数が多いからです。

庭
親族の人数が多いので、庭もしっかり取りました。

05 WARMTH AND WINDOWS

寒かった水回りと、窓の数。

どちらの世帯の要望にもあった、性能の高さ。この家のUA値は0.43、BEIは0.42。太陽光発電は6.75kWを載せています。寒かった水回りは、浴室も洗面も、なるべくLDKと直結して流れるような形にし、冷暖房の効率が良くなる間取りにしました。

外壁は、ガルバリウムか、サイディングの高性能なタイプかで迷っていました。機能面で迷っていたご家族に、それならパワーボードが、機能とコストのバランスがいちばんいいですよ、とすすめたのは青山です。祖父の家もパワーボードで、音などはご家族も体感しています。ご家族も、それでいこうか、という感じでした。そうして、当時の標準のパワーボードに決めました。メインのネイビーのところは縦のストライプが入ったスタイリッシュなデザインに、玄関周りのブラウンのところにはラップサイディング調のデザインを入れて、外観を仕上げています。

予算は、削ったというより、窓の費用でバランスをとりました。たとえば浴室の窓。昔は換気のためにつけるものでしたが、いまは24時間換気も、お風呂の換気扇も性能が上がっています。窓をつけて凹凸ができ、掃除の手間が増えるくらいなら、ないほうがいいよね。そう考えて、なくしました。無駄なところには窓を入れない。その分、南側など、必要なところには大きい窓をちゃんとつけています。

こだわったのは、キッチンなどの水回りです。ショールームには、奥様とお母様がお二人とも、いろいろなメーカーに何回も足を運びました。特に奥様は何度も行かれて、最終的には、タカラスタンダードのホーローパネルが気に入って、そのメーカーに決めました。

子世帯のLDK
子世帯のLDK。

06 LIFE TOGETHER

普通の日にも、皆が集まる。

親世帯のLDKは、そもそもご両親の二人暮らしで、それほど物も多くないので、青山が提案したサイズで十分でした。そのリビングに、いまはよく人が集まっています。ご主人には弟さんが二人いて、いとこも含めて、同世代の親族の人数が多い。青山が普通の日に訪ねたときにも、弟さんたちの奥様とお子さんたちが遊びに来ていて、おしゃべりをしていました。普段から集まっている感じです。

親世帯のLDK
親世帯のLDK。親族がよく集まるリビングです。

天気のいい日は、広く取った庭で、子世帯のお子さんも一緒になって遊んでいるところを、青山もよく見かけます。家を壊すことを躊躇していたお母様は、いまは本当に充実して、楽しく過ごされている様子です。完成したあと、青山が遊びに行ったときの雑談でも、孫たちがよく遊びに来てくれるから楽しい、とおっしゃっていました。

点検や何かの機会に青山が会いに行ったとき、奥様は実際にこうおっしゃっていました。冬、もう全然、着替えているときも寒くない。

住み心地については、こんな話も青山は聞いています。太陽光も載っているので、光熱費もだいぶ少なくなった。エアコンもほとんどフル稼働することなく、安定して静かに暮らしている。パワーボードもあるので、外の音もあまり聞こえない。非常に快適に暮らしている。

1棟ずつ建てる案から、図面と見積もりを比べて二世帯1棟へ。玄関も水回りも電気も水道も分けて、2階は離す。そのうえで、将来のために1か所だけ、仕事場とファミリークロークをつないでおく。寒かった水回りはLDKと直結させて、冬の着替えも寒くない家に。思い出の詰まった家は、解体の前にゆっくり整理する時間をとって建て替えました。ご両親と将来も仲良く過ごせる住まいを、というご主人の思いに、N様邸の一つひとつの判断がつながっています。

設計担当・青山 享平から

「最初は、それぞれ人数が多いので、意見をまとめるのが大変だったという思い出があります。でも結果的に、非常に立派なお家ができました。お父様もお仕事を頑張っていらっしゃいますし、いまはみんなも集まって、楽しく使ってくれています。非常にやって良かったと思っています。」
提案してよかったと青山が振り返るのは、玄関周りのつくりと、2階で建物を離したこと、そして完全に二世帯でしっかり分離したことです。生活は分けながら、お互いが適度に関われる。そんな形にできたことでした。

今伊勢町2階建てモデルハウスの室内

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写真で気になった暮らしを、今度は、実際の住まいで。

広さの感じ方、家事の動線、素材の手ざわり。
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