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STORY OF A HOME / N FAMILY

バイクを眺める小上がりと、目線が合うキッチン。

設計担当 青山 享平

設計担当 / Kyohei Aoyama

青山 享平

「要望をそのまま形にするだけでなく、暮らしとコストのバランスまで一緒に考える」

奥様のご実家の隣にある土地で、老後まで快適に暮らせる家を。バイクが大好きなご主人のためのガレージと、料理好きのご夫婦のキッチン。平屋にこだわりすぎず、子ども部屋だけを2階に上げた「半平屋」ができるまでを、設計担当・青山への聞き取りからご紹介します。

PROLOGUE

せっかくなら、老後まで快適に。

N様は、ご夫婦とお子さんの3人家族です。ご主人は、設計担当の青山の親戚。先にご主人のご実家の建て替えを青山が担当していて、その流れで、自分の家もお願いしたい、と声をかけていただきました。ほかの住宅会社は、特に見ていませんでした。ご夫婦は、先に建てたご主人のご実家を見て、断熱性などが快適で、やっぱりいいね、と感じていました。お子さんが遊ぶフリースペースのような場所の考え方も、ちょっと真似したい。そんな思いもありました。

家を建てる前は、アパートで暮らしていました。ダイニングのまわりからリビングのあたりまで、ほとんどお子さんのおもちゃでいっぱい。少し収納に困っている感じがあったかな、と青山は見ています。

実は奥様は、家を建てること自体には、そこまで乗り気ではありませんでした。お金もかかるし、やることも大変で、ちょっと億劫。ただ、奥様のご実家の隣に土地が空いていました。せっかくなら、建てるのもありかな。そんな気持ちから、話が始まりました。お子さんの入学までには、という漠然とした思いもありました。当時のアパートからはだいぶ離れるので、できれば新しいところの学校で、一から馴染めるのがいいよね、と。

ご実家の隣ということもあったので、青山は最初の相談で、どんな暮らしがしたいか、というところから順番に聞いていきました。

どうせ建てるなら、と奥様が大切にしたのは、老後の暮らしを快適にすることでした。30代では珍しい、と青山は感じました。お子さんはいずれ独立する。いちばん長く住むのは、自分たち。老後にまたリフォームするくらいなら、今から老後まで快適に住めるほうが効率的。だから、暮らしは原則1階で完結する平屋がいい、という希望でした。平屋で老後の豊かな暮らしが実現できるなら、実家の隣だし、それもいいよね。奥様の気持ちが前向きになったのは、そこからでした。

ご主人は、とにかくバイクが大好きです。お気に入りのクラシックバイクを含めて3台。盗難防止のためにも、バイクガレージが欲しい。バイクを眺めているだけでお酒が飲めるくらい好きなので、家の中から、いつでも眺められたらいい。それが、ご主人の最初の希望でした。

  • 老後まで快適に、暮らしは1階で完結する
  • バイク3台をしまえて、家の中から眺められるガレージ
  • 二人とも料理好き。一緒に料理ができるキッチン
  • 子育ての動線と、隣のご実家とのスムーズな行き来
  • 防犯と、周りからの視線。それでも家の中は暗くしたくない
  • 予算の中で、どこにお金をかけるか

01 THE LAND NEXT DOOR

ご実家の隣の土地で、建物にお金をかける。

土地から買う、という選択肢もありました。お互いの職場や実家からの距離を考えると、別の場所にも興味があって、悩んだ時期もありました。特にご主人は、奥様のご実家のあたりが地元に近いわけではありませんでした。もともと住んでいた日進市の周辺や、ご主人のご実家がある長久手市のあたりの土地も、少し見ていました。ただ、ネットなどで見ると単価がかなり高く、早々に諦めました。それなら、土地がせっかくあるのだから、奥様のご実家の隣で、という流れになりました。もともと奥様のご両親とご主人は、非常に仲が良い間柄です。隣に住むことについて、ご主人も、全然大丈夫、という返事でした。

決め手になったのは、すでに土地があったことです。計画地は、奥様のご両親の土地。奥様が子どものころから住み慣れた場所です。土地から買うより、建物にしっかりお金をかけられる。それが最終的な決め手になったのかな、と青山は振り返ります。水害などを調べても、悪くない場所でした。

ただ、この土地にも気をつけたいことがありました。敷地がそこまで広くないので、車の止めやすさや取り回しが気になる。南には、すでに家が建っている。平屋がメインなので、日当たりも気になります。周りには新築の家もあって、視線も気になる。大通りから一本入った場所なので、お子さんのことも含めて、防犯も気にしていました。こうした条件に合わせた計画と提案をしてほしい、というご要望が、最初からありました。

隣同士であることは、逆に生かせました。駐車場をご実家側と組み合わせたい、と最初に言ったのは奥様です。ご両親とも実際に話をして、濡れずに行き来できたらいいよね、と。そこで青山が、駐車場を2軒の間に取り、カーポートを屋根代わりにする形をご提案しました。車も止められて屋根にもなる。ご家族からも、効率がいいので、いいよね、という反応でした。止めやすい形にもなっています。配置を工夫して、お隣との距離も上手に開けることができました。

敷地の条件を、配置に生かす
隣がご実家だから、狭さと視線を解けた。

02 CHECKING THE LAND

海に近い町で、ハザードマップを見る。

青山もご主人も、地元ではありません。海が近いこともあって、水害は割と心配していました。

ハザードマップを一緒に見ると、東側の線路から海に向かっては、被害が大きい想定になっていました。今回建てる場所は内陸側で、意外と大丈夫。奥様や奥様のご両親に聞いても、この場所は意外と大丈夫だよ、と言われて安心した記憶がある、と青山は振り返ります。

ハザードマップ上も大丈夫そうだったので、家のつくりで特別な対策は必要ありませんでした。

土地を決める前に確かめたこと
地図と、地元の声の両方で確かめました。

03 HALF A STORY UP

平屋にこだわらず、半平屋に。

ご家族は、予算をかなり気にしていました。平屋がいい。でも敷地の形と予算で、平屋で本当にやりたいことが実現できるのか。バイクガレージを設ける分、建物は大きくなります。平屋ですべてを叶えようとすると、予算的にも敷地的にも少し厳しい状況でした。

そこで青山は、完全な平屋の優先順位を下げることをご提案しました。老後に重きを置くなら、子ども部屋は使う頻度を考えて2階へ。生活の中心は1階に置いて、予算と敷地を抑える。この家族には「半平屋」が合っている、という提案です。子ども部屋だけ2階に上げると、敷地の形や全体の配置のバランスで見ても、庭や駐車場まで含めてきれいに収まる。そのうえで青山は、こうお話ししました。ベースの暮らしは、ご夫婦お二人が老後に快適に暮らせること。それなら、お子さんの部屋は上にあってもいいですよね、と。確かに、とご夫婦お二人とも納得されました。

平屋と、半平屋を比べて
子ども部屋だけ2階へ。暮らしは1階で完結する。

平屋の希望がベースなので、外観は屋根を大きくかけて、2階建てっぽく見えない形にこだわりました。この外観を、ご家族には非常に気に入っていただきました。

お金のかけ方にも、メリハリをつけました。性能は、暮らすうえで快適に過ごせる十分な仕様に調整して、少し予算を抑える。ユニットバスなど、こだわりの薄いところはシンプルに。寝室や個室は、3人で寝るのに広すぎない、必要最低限のサイズに。その分、キッチン周りと、外壁など外観のかっこいいところには、コストをかけました。

04 EYE LEVEL

バイクを眺める小上がり。

ご主人はとにかくバイクがメイン。いつでもバイクを眺めながら、お酒が飲めれば。二人とも料理好きで、ご主人は料理人。キッチンが家の中心になる、と青山は感じていました。奥様のポイントは、子育ての動線だったと青山は見ています。

青山がいちばんフォーカスしたのは、ひとつの情景です。ガレージを眺めながら、ご主人がお酒を飲んだり、お子さんと戯れたりする場所。それを、奥様がキッチンで家事をしながら眺める。家族が楽しくしている雰囲気が、そこにある。

そこでLDKに、バイクを眺められる窓をつけ、その部分をあえて小上がりにして高さを上げました。キッチンに立つ奥様と、小上がりに座って遊ぶご主人やお子さんの目線が、ちょうど合う高さです。打ち合わせでは、CGを見せながらご提案しました。立体的に広がりがあって、遊び心もあるし、面白いよね。非常にいいね。奥様にもご主人にも、そう言っていただきました。

家族とバイクが、目線でつながる
キッチンに立つ奥様と、小上がりに座るご主人。目線がちょうど合う。
バイク、小上がり
バイクを眺める、小上がり。

小上がりとバイクガレージは、FIX窓(開かない窓)でつないでいます。室内から見ると、FIX窓はかなり低い位置にあるので、大きい物をぶつけたりしないように気をつけてください、とお伝えしました。ガレージの中は、建てるときに作り込むより、出来上がってから自分でデコレーションを重ねていくのを、ご主人は楽しみにしていました。だから建築の部分は、むしろシンプルでいい、というご希望でした。

防犯と視線、それでも家の中は暗くしたくない、という希望には、窓の取り方で答えました。道路側など外から見えるところには、大きな窓をあまり配置しない。反対側の、庭につながるところには、逆に大きな窓を配置しています。

南にすでに家が建っていることには、東側で答えました。東側は結構空いていて、東のお隣は平屋。しかも、建てた場所よりお隣の土地のほうが1mぐらい低く、目線ではお隣の屋根が見えるくらいでした。そこで、東をメインに採光をとる工夫をしています。

アパートでは、おもちゃでいっぱいでした。新しい家では、小上がりの下に設けた収納や、2階の納戸にしまえるようにしています。

動線は、玄関からリビングへ入る動線と、玄関から洗濯室を通ってキッチンへ抜ける動線の、二方向の回遊にしました。洗濯室を通すのは、家事の動線をスムーズにするためです。ただ、キッチンと洗濯室の間には、洗濯物にキッチンの臭いがいかないように扉を設けています。帰ってきてすぐ、毎日持ち歩くカバンやお子さんの帽子などを置ける場所がほしい、という奥様の希望には、リビングに入ってすぐのところに小さめの収納スペースを。すごく生活がしやすい、と言っていただきました。

回遊動線
二方向に回れる、回遊動線。

05 A CHEF'S KITCHEN

料理人のキッチンと、かっこいい外観。

キッチンは、とりあえずかっこよくしたい。間接照明にも興味がある。そんなご要望に、青山は折り下げ天井をデザインとしてご提案しました。料理で使いたいというガスオーブンは、キッチンから動線のいい場所に置けるように配置。コンロは、ガスのワイドタイプを選びました。

キッチン
折り下げ天井のキッチン。

外観も、かっこよくしたい、というご主人の要望が強いところでした。外壁は、自然素材のような風合いのあるものを。コーナーはスチールの出隅で非常にスリムに収め、屋根は軒の出をなくして破風もつけず、スリムに見せています。土台の水切りもスリムなタイプにしました。細部まで仕様を調整したので、一般的な住宅と見比べると、ぐっとかっこよく仕上がったのではないか、と青山は話します。

外観
屋根を大きくかけて、2階建てに見えない外観に。

半平屋なので、1階の面積はかなり大きくなります。回遊動線で空間をつなげていますが、建具は付けたい、というご希望でした。建具を閉め切りすぎると、寒い部屋や暑い部屋が出てしまう。暮らしに合わせた冷暖房の使い方には注意してください、と、青山は事前にお伝えしました。

06 LIFE AFTER MOVING IN

思い描いたとおりの暮らし。

住み始めて最初の冬、脱衣室のまわりが少し寒い、というご相談がありました。事前にお伝えしていた、建具を閉め切ると寒い部屋が出る、という話です。青山は、冷暖房と空間の使い方をご提案しました。いちばんわかりやすいのは、キッチンで料理をしていないときは、なるべく扉を開けて、冷暖房が脱衣室のほうへ行くようにすること。それからは快適に過ごせている。光熱費も、太陽光を載せていることもあって、思った以上に安く済んでいる。青山は、そう聞いています。

ご主人はガレージにバイク3台を入れて、アメリカンな家具も置いて、思い描いていたとおり非常に楽しく過ごしています。料理も非常に楽しくできるし、バイクを眺めながらお酒を飲むのも楽しい。ガレージの中でバイクをちょっとカスタマイズしたりもできて、満足している。ご家族はそう話していました。小上がりでは、お子さんが飛び跳ねて遊んでいる。青山がうかがったときも、遊んでいるときはおもちゃが出ていても、使い終わったらちゃんとしまう、という使い方をしてくれていました。奥様は、キッチンに立って過ごしています。

奥様のご両親も隣なので、頻繁に行き来していて、非常に喜んでくださっています。点検でうかがったときも、隣からお母様が料理を持ってきて、食べてね、としているところに出くわしました。家族三世帯が仲良く暮らしている。青山は、見ていてそう感じています。

アパートでおもちゃの収納に困っていて、家を建てることにも乗り気ではなかった。そこから、ご実家の隣の土地で、老後まで快適な家を。おもちゃは小上がりの下と2階の納戸へ。平屋にこだわりすぎず、子ども部屋だけを2階へ。土地代がかからない分を建物に回し、ハザードマップと地元の声で土地を確かめる。最初の冬に脱衣室が寒くなったときも、事前にお伝えしていた扉と冷暖房の使い方で、快適になりました。N様邸には、バイクを眺めるご主人と、それを眺める奥様の情景から始まった判断が、つながっています。

設計担当・青山 享平から

「バイクを眺めているだけでお酒が飲めるほどバイク好きなご主人と、それを眺めるのが大好きな奥様の、幸せ家族な家です。」
平屋という要望に、単純に平屋だけで答えるのではなく、柔軟に、子ども部屋だけを2階に上げるといった提案をした。それで、コストと暮らしやすさのバランスのいい家が提案できたのは、非常によかった。青山は、そう振り返ります。

今伊勢町2階建てモデルハウスの室内

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写真で気になった暮らしを、今度は、実際の住まいで。

広さの感じ方、家事の動線、素材の手ざわり。
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