一宮市の洪水リスクを正しく読む|対象河川と浸水深6分類の見方
一宮の土地を検討していて、地図の北に木曽川を見つけた瞬間、「洪水は大丈夫なのか」と手が止まる。この街で土地を探す方の多くが、一度は通る不安です。
検索して出てくるのは市公式のPDFやマップへのリンクがほとんどで、その情報を「家探しの判断」にどう翻訳すればいいかは教えてくれません。
先に構造をお伝えします。一宮の洪水リスクは、木曽川・日光川などの対象河川と、水が溜まりやすい平坦な地形の組み合わせで決まります。ハザードマップの前提は、水防法に基づく「想定最大規模の降雨」。めったに起きない最大級まで見込んだ地図です。読み方さえ知れば、漠然とした不安は土地ごとの確認事項に変わります。
私たちニッケンホームは、1979年の創業から45年、この一宮で3,800棟以上の家を建ててきました。水と付き合ってきた平坦な街で家づくりを続けてきたからこそ、洪水リスクは「怖がる話」ではなく「確認して備える話」としてお届けします。
一宮の洪水リスクの構造 — 川の数と平坦な地形
一宮市で洪水を心配する理由は、実は「川が近い」という単純な理由ではありません。地形と川の関係、そして街の変化が複合的に影響しています。まず、この構造を理解することが大切です。
一宮市の地理的な特徴を見ると、市全体が濃尾平野の低平地に位置しています。言い換えると、起伏がほぼなく、まるでテーブルの上のような地形です。このような平坦な土地では、降った雨が「流れにくく、停滞しやすい」という特性があります。通常、山がある地域では雨が自然に低い場所へ流れていきますが、一宮市では水がどこに流れるかが川や排水システムに大きく左右されるのです。
さらに、過去数十年間の市街化が影響しています。元々、一宮市の周辺は農地が広がっていました。農地の土は雨水を吸収しやすく、地下に浸透させるという大切な役割を果たしていました。しかし、宅地化や商業施設の建設によって農地が減少し、コンクリートやアスファルトが増えると、雨水は地面に浸透せず、そのまま表面を流れるようになります。結果として、降雨時に一度に多くの水が溜まりやすくなり、排水が追いつかなくなるリスクが高まるのです。
このように考えると、一宮の洪水リスクは「木曽川が近いから」という川の距離だけで測ることはできません。市域全体の地形的な特性と、都市化による雨水の流れ方の変化が組み合わさった結果として、市全域にリスクが分散しているのです。特に、複数の河川と、市街化によって雨水が溜まりやすくなった環境の両方を理解することが、土地選びの判断につながります。
複数の河川が存在する理由
一宮市に複数の河川が存在するのは、この地域の地理的な位置に関係しています。名古屋圏の西側に位置する一宮は、複数の水系の分水嶺に近く、木曽川、庄内川、それに属する中小河川が東西に流れています。つまり、どこに土地を選んでも、何らかの河川の「流域」に含まれるということです。家を探すとき「木曽川から遠いエリアを選べば安全」という発想は、実は大きな誤解の可能性があります。木曽川から遠い場所でも、青木川や五条川といった別の河川や、内水(下水道が処理できない雨水)のリスクがあるからです。
このため、候補地を見つけたら、単に「近くに川があるか」ではなく、「どの川がどの距離にあり、市全体の排水システムの中でどう位置づけられているか」を理解することが、より正確なリスク判断につながるのです。
※出典:一宮市|「洪水に備えて」
対象河川を知る — 木曽川・日光川は国管理
一宮市内を流れる河川は複数あり、洪水ハザードマップは木曽川・日光川をはじめとする複数の河川の氾濫を想定して作られています。これらの川は、国が管理する大きな川と、県が管理する中小の川に分けられています。自分が検討している土地がどの河川の影響を受けやすいかを知ることは、リスク評価の第一歩になります。
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管理主体 |
河川名 |
詳細 |
|---|---|---|
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国管理(一級河川) |
木曽川 |
市の北部を東西に流れる大河 |
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日光川 |
市の西部を流れる河川 |
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県管理 |
新川 |
市北東部 |
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五条川 |
市中央 |
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青木川 |
市中央〜南部 |
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その他3本 |
水位周知河川として指定 |
※出典:一宮市|「洪水・内水ハザードマップ」
ハザードマップの前提知識
市が発行しているハザードマップは、水防法(平成27年改正)に基づく「想定最大規模の降雨」を前提にしています。発行は令和3年(2021年)3月25日。めったに起きない最大級の雨まで見込んだ浸水予測という位置づけです。
国指定河川の木曽川と日光川は、堤防規模も大きく、全国規模で水位が管理されています。一方、県管理の新川や五条川、青木川は、より地域に密着した管理となっており、河川ごとに特性が異なります。候補地の近所にどの河川があるかを知ることで、その土地特有のリスク特性が見えてきます。
対象河川の位置づけと土地選びの視点
国が管理する2本の大河(木曽川と日光川)は、流域が広く、上流での豪雨の影響を直に受けます。特に木曽川は市の北部を東西に流れ、市街地に近い堤防決壊や越水のリスクがあります。一方、日光川は市の西部を流れており、西側に位置する土地を検討する場合、この河川との距離が重要になります。
県が管理する4本(新川、五条川、青木川、浅井川)は、一宮市内で多くの住宅地を通過しており、地域によってはより身近な浸水リスク要因になります。特に新川は市の北東部、五条川は市中央、青木川は市中央から南部にかけて流れており、各エリアでの土地選びの際に確認が必要です。
水位周知河川として指定されている3本は、洪水時に特に注視される河川であり、具体的な名称と位置については市役所の資料やハザードマップで確認できます。これらの河川は、ふだんは水量が少なく見えることもありますが、大雨時には急激に水かさが増すため、見落とされやすいリスク要因として認識しておく価値があります。
つまり、「木曽川が近い=リスク高」という単純な判断ではなく、複数の河川が市全体に張り巡らされている中で、候補地がどの河川群の影響範囲に入るかを総合的に判断することが、より正確な土地評価につながるのです。
※出典:一宮市|「洪水・内水ハザードマップ」
浸水深6分類の読み方 — 0.5mと3mでは行動が違う
ハザードマップを見ると、色分けされた範囲と数字が書かれています。これが「浸水深」です。しかし、この数字が何を意味するのか、そして自分の家だったらどうなるのかを理解している人は多くありません。浸水深の6分類を行動に翻訳することで、ハザードマップは単なる地図から「家選びの判断材料」に変わります。
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浸水深 |
意味 |
自宅での状況 |
推奨される行動 |
|---|---|---|---|
|
0.5m未満 |
床下浸水 |
1階の床の下まで水が来る |
2階への垂直避難で対応可 |
|
0.5m〜1m |
1階床上浸水 |
1階の床から壁の下まで |
早期避難または垂直避難 |
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1m〜2m |
1階天井まで |
1階がほぼ水に浸かる |
早期避難が必須 |
|
2m〜3m |
2階床上浸水 |
2階まで水が上がる可能性 |
早期避難が必須 |
|
3m〜5m |
2階天井まで |
2階天井近くまで水が来る |
広域避難が必須 |
|
5m超 |
3階以上 |
3階まで浸水の可能性 |
広域避難が必須 |
※出典:国土交通省|「川の防災情報(浸水深と避難行動)」
家探しでこの表をどう使うか
例えば、気に入った土地を見つけてハザードマップで確認し、「0.5m未満」と書いてあれば、万が一の浸水でも2階への避難で対応できます。一方、「2m〜3m」と書いてあれば、2階建てでも1階はほぼ失われることを前提に考える必要があります。こうした予測が分かると、建築時の設計(1階をどう使うか、防水対策をどこまでするか)や、保険の選び方も変わってきます。
重要な注記
ここで大切なのは、ハザードマップは「想定」であり、すべての事象を網羅するものではないということです。指定範囲外の場所でも、実際には浸水することがあります。一方で、指定範囲内でも、地形の微妙な起伏や建物の周辺工事の影響で、浸水しない場所が存在することもあります。つまり、ハザードマップは必要な判断材料ですが、それだけで判断を終えるのではなく、実際の土地を見学し、近所の人に過去の浸水履歴を聞くなどの確認も重要です。
※出典:国土交通省|「川の防災情報(浸水深と避難行動)」
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実際に起きた浸水 — 東海豪雨から6回の記録
ハザードマップは「想定」ですが、一宮市には「実績」があります。過去26年間に、市内で実際に大きな浸水被害が何度も起きています。この歴史を知ることで、地図上の色分けが、現実にどのような被害に結びついているかが見えてきます。
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年月日 |
災害名 |
一宮市の被害状況 |
|---|---|---|
|
平成12年9月(2000年) |
東海豪雨 |
市内広範囲で甚大な浸水被害(以降の防災対策の出発点) |
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平成20年8月末(2008年) |
集中豪雨 |
市内で浸水被害発生 |
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平成23年8月(2011年) |
集中豪雨 |
市内で浸水被害発生 |
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平成25年9月4日(2013年) |
集中豪雨 |
浸水被害発生 |
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平成29年10月22-23日(2017年) |
台風21号 |
広範囲で浸水 |
|
平成30年7月7日(2018年) |
集中豪雨 |
浸水被害発生 |
※出典:一宮市|「浸水実績図(内水ハザードマップ)」
記録から分かること
最も衝撃的なのは、2000年の東海豪雨です。この災害は、その後の一宮市の防災計画と治水投資を大きく変えるきっかけになりました。その後も、ほぼ数年ごとに浸水被害が繰り返されており、2017年の台風21号は特に広範囲での被害が記録されています。
市が公開している最新の浸水実績データは2018年7月のものです。2020年以降の浸水実績は市の公開資料に記載がなく、この間、大規模な浸水被害が発生していない可能性があります。
実績の詳しい確認方法
市公式サイトの「138マップ」という地図サービスでは、これらの浸水実績を色付けして表示しており、24時間いつでも確認できます。自分が検討している土地の周辺が、過去どの時点で浸水しているかは、その土地を理解するうえで非常に大切な情報です。詳しい情報については、別記事で解説しています。
※出典:一宮市|「浸水実績図(内水ハザードマップ)」
東海豪雨後の治水対策 — 26年分の投資を知っておく
2000年の東海豪雨から26年。一宮市は、これまで複数の対策に投資してきました。現在の浸水リスクを理解するには、「何も対策がない状態と比べて、今はどこまで改善されているのか」を知ることが大切です。同時に、対策にも限界があることを正直に理解することが、家選びの判断につながります。
治水対策の3つの柱
一宮市の総合治水計画は、単一の方法ではなく、3つの異なるアプローチを組み合わせて、市全体で雨水を処理する設計になっています。
- 河川等対策 — 河川・水路の改修によって、大雨時の流れを迅速に川へ導く
- 流域対策 — 市街地全体で雨水を一時的に貯め、地下に浸透させる能力を高める
- 浸水被害軽減対策 — リアルタイム監視と情報提供で、住民の避難判断を支援する
この3本立てで、市全体として総合的に対策しているのです。
市が実施している4つの個別対策と具体像
河川等対策:河川・水路改修
市内の木曽川、庄内川、新川などの主要河川の堤防強化が進められています。下水管渠の整備やポンプ場の建設も含まれており、都市内の排水路から大河川までの全ネットワークが改善されています。こうした改修によって、大雨時の水が効率よく川に流れるように設計されています。
流域対策:調整池・校庭・公園への雨水施設・透水性舗装
流域対策は、市街地全体で雨を「貯める」と「浸透させる」の両面から進められています。古神調整池や青木川調整池といった調整池は、大雨時の水を一時的に受け止める役割を果たします。これらの池の整備によって、河川に一度に流入する水の量が緩和されます。
同時に、学校の校庭や公園の地下に設置されている雨水貯留施設は、日常は空いた状態で待機し、豪雨時に雨を吸収します。ポンプ場と組み合わせることで、市全体の雨水処理能力が高まります。
さらに進んだ対策として、道路面への透水性舗装の導入や、住宅地での浸透桝(りゅうとうます)の設置推進も行われています。浸透桝は、庭先で雨水を地下に浸透させる小さな施設で、市全体に分散配置することで、一度に流入する水の量を大幅に減らす効果があります。
浸水被害軽減対策:リアルタイム監視と情報提供
市内の河川や下水の水位、雨量をリアルタイムで監視し、市民に情報提供する体制が整っています。これにより、「あと何時間で危険になるか」という予測が可能になり、住民が避難判断をするための時間が生まれるのです。
整備目標と正直な現実
市の治水整備は、「5年に1度の割合で起きるような規模の降雨(時間雨量52.4mm/時)に対応する」という目標で進められています。この基準に到達すれば、家屋の浸水被害(床下浸水を含む)の解消が目指されており、計画期間は30年間とされています。これは並大抵ではない投資規模です。
しかし、2000年の東海豪雨は時間雨量114mmという、この想定の2倍以上の規模でした。つまり、市の対策が進んだ今でも、東海豪雨級の降雨が再び起きた場合には、対応しきれない可能性があるということです。この事実は、恐怖を煽るものではなく、正直な現実です。だからこそ、市は防災情報の発信や、住民の自助対策をセットで進めているのです。
※出典:一宮市|「東海豪雨後の取り組み」
確認方法と備え — 138マップと市の補助制度
ここまで、一宮の洪水リスクについて構造や歴史、対策を見てきました。最後は、「では、自分の土地はどう確認すればよいか」「何を備えればよいか」という実践的な部分です。
デジタルで確認する方法
市公式サイトの「138マップ」は、洪水ハザードマップと内水ハザードマップを重ね合わせて表示できるインタラクティブな地図です。住所を入力すれば、その場所の浸水想定深がわかります。パソコンやスマートフォンから24時間アクセス可能で、候補地を見に行く前に自宅で確認できるのが利点です。
紙版を手に取る方法
より詳細な情報を必要とする場合は、市役所で紙版のハザードマップを入手できます。配布場所は、市役所本庁舎の8階治水課、4階危機管理課のほか、尾西庁舎、木曽川庁舎、各出張所です。紙版は細部の浸水深が色分けで示されており、デジタル版とセットで活用すると、より正確な判断ができます。
リアルタイムの情報を受け取る方法
洪水の不安は、あらかじめ「何が起きるか」を知ることだけでなく、「今、どうなっているか」を知ることでも軽くなります。一宮市が提供する「あんしん・防災ねっと」というメール配信システムに登録すると、気象警報や浸水の危険性に関する情報、避難指示などが5段階の警戒レベルとともに配信されます。河川の水位やカメラによる映像もリアルタイムで公開されており、緊急時にどう動くかの判断材料になります。
自分でできる備え
市では、雨水タンク設置や浸透桝(りゅうとうます)といった、住宅の浸水対策施設の設置に対する補助制度を用意しています。これらは、自宅の庭などで雨を一時的に貯めたり、地下に浸透させたりするもので、市全体の雨水対策をサポートする役割を果たします。
さらに、市役所の危機管理課で無料配布されている「防災ハンドブック」には、避難場所、液状化危険度マップ、地震情報など、洪水以外の防災情報も盛り込まれています。転入時に情報をもらえることもありますが、必要なら直接入手することもできます。
※出典:一宮市|「洪水・内水ハザードマップ」
まとめ|洪水リスクは「川の距離」ではなく「地図の読み方」で判断する
これまでの内容をまとめると、
- リスクの構造は複数の対象河川+平坦地形。川から遠くても確認は必要
- 浸水深6分類を「取るべき行動」に翻訳して読む。範囲外=安全ではない
- 治水対策は26年分進んだが、ゼロリスクではない。138マップでの確認と備えをセットで
となります。
ハザードマップ全体の使い方や、内水浸水の実績は、別の記事で詳しく解説しています。
リスクを知って、備えて建てる私たちニッケンホームは、一宮で45年、3,800棟以上の家を建ててきました。この街の土地と気候に合わせた家づくりの基本をまとめた「はじめての家づくり応援BOOK」(4冊)を無料でお届けしています。 土地選びの疑問にも役立つ内容です。営業のお電話はいたしません。
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